第137章 誹謗も一種の仰望(7)

林田正益はウェイターがドリンクメニューを持ってくるのを待たずに、自分がここに保管しているお酒を持ってくるよう指示した。

ウェイターは丁重に「はい」と答えて個室を離れ、しばらくすると「ロイヤルサルート」のボトルを持って戻ってきた。

林田正益はウェイターに酒を注がせず、直接彼女に下がるよう言った。

個室のドアが閉まると、林田正益はボトルを手に取り、二杯のお酒を注ぎ、そのうちの一杯を森川記憶の前に差し出した。記憶がグラスを受け取ると、彼は彼女とグラスを軽く合わせ、先に一気に飲み干した。

林田正益がそうしたので、森川記憶は面子を立てるしかなく、笑顔を浮かべながらグラスを口元に運び、半分ほど飲んだ。

林田正益は自分のグラスに酒を満たしながら、再び話し始めた。彼の話題はまだ『三千の狂い』についてだった。