第136章 誹謗も一種の仰望(6)

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このような宴会に参加すると、お酒を飲まないわけにはいかない。森川記憶は一人一人と杯を交わす際、象徴的に少しだけ口をつける程度だったが、部屋には十数人もいたため、結局かなりの量を飲むことになった。そのため、千歌が去ってからそう時間が経たないうちに、記憶はトイレに向かった。

トイレから出て、記憶が洗面台に向かい、蛇口をひねって手を洗い終え、ちょうどペーパータオルを取ろうとしたとき、背後から声がかかった。「記憶ちゃん?」

記憶が振り返ると、中年の男性が男子トイレの前から歩いてきていた。

記憶は特別記憶力がいいわけではなかったが、彼のことは知っていた。今夜の宴会に参加していた人物で、『三千の狂い』の主要投資家の一人だった。名前は完全には覚えていなかったが、姓は知っていた。記憶は微笑みながら丁寧に言った。「林田社長」