第199章 あなたが一生迷い続けても、私のそばに来ることを願う(9)

「……あれ?違うわね、あなたが秋に撮影した映画って、『王城』じゃないの?つまり、あなたと綾人は同じ撮影現場にいたってことよね……ねえ記憶ちゃん、今あなたと綾人はどんな関係なの?」

長い間話しても返事がなかった森川叔母さんは、思わず声を大きくした。「記憶ちゃん、お母さんが話しかけてるのよ!」

「まあまあかな……」森川記憶はいい加減に答え、窓の外に目を向けた。

海岸に近づくにつれて、風も強くなってきた。森川記憶は車の窓を上げた。

窓ガラスには、車載テレビの映像がはっきりと映り込んでいた。そこでは同じ映像が繰り返し流れていて、しばらくすると『王城』の初公開の様子が見えた。

……

ホテルに到着すると、森川記憶は両親とあまり話さず、自分の部屋に直行した。

車載テレビで髙橋綾人を見たせいか、森川記憶の気分は少し落ち込んでいた。ベッドの上でしばらくぼんやりとした後、やっと眠りについた。