「ああ」佐藤未来は返事した。
森川記憶は礼儀正しく別れを告げた。「佐藤さん、お邪魔しませんので」
今回はしばらくしてから、佐藤未来からのメッセージが届いた。「わかりました」
森川記憶は適当に笑顔の絵文字を送り、スマホを置くと、窓の外を見た。
彼女は明るい陽光を見つめ、しばらくぼんやりしていた。山崎絵里がベッドの側に来て手で彼女を叩くまで、我に返らなかった。彼女は山崎絵里を見た。
「記憶ちゃん、何ぼーっとしてるの?何度も呼んでも反応ないよ。行くよ、食堂でご飯!」
「うん、すぐ」森川記憶は返事をして、急いでベッドから降り、洗面所へ向かった。
週末の食堂は人が多くなかった。
『三千の狂い』の撮影中止で心に引っかかることがあった森川記憶は、あまり食欲がなく、適当に丼物を注文し、窓際の席に座って、何気なく食べながら山崎絵里を待った。