二枚目は髙橋綾人の寮の同室に宛てたものだった。「昨夜、お前がトイレでオナニーしていたのを知っているぞ」
「……」
みんな顔見知りの友達だったので、書かれていたのは恥ずかしいエピソードばかりで、全員が大笑いしていた。最後の一枚になり、クラス委員長がそれを開いたとき、これまでのように興奮して読み上げるのではなく、驚いた表情で森川記憶を見つめ、そして紙を彼女の前に差し出した。
2秒ほど経って、森川記憶はようやくこの紙が自分宛てかもしれないと気づき、疑わしげに手を伸ばして受け取った。
先ほどのクラス委員長の驚いた表情から、森川記憶の心の中には少なからず緊張があった。彼女は紙を持ったまま2秒ほど躊躇してから開いた。
下を見ると、真っ白な紙に、黒いインクの文字がはっきりと目に入った。「森川記憶、ごめんなさい」