第232章 森川記憶、ごめんなさい(2)

男性が彼女をずっと見つめていたのか、それとも偶然にも再び彼女の方を見たのか、彼女の視線と彼の目がまた重なってしまった。

森川記憶の心臓が激しく跳ねた。しかし、それはほんの一瞬のことで、彼女はさも何気なく髙橋綾人の方を見たかのように視線を逸らした。

おそらく先ほど彼と目が合ったせいだろう、彼女の脳裏に彼が自分に向かってうなずいた場面が浮かんだ。彼女は無意識のうちに、スマホで押さえていたテーブルの上の紙を指先で押した。

一回のゲームが終わり、誰かが新しいラウンドのゲームをどう進めるか考え始めた。

みんながあれこれと提案している最中、髙橋綾人のスマホが鳴った。

彼はスマホを取り出して画面を見ると、みんなから離れることなく、そのまま電話に出た。

電話の向こうの人が何かを言ったようで、彼は「わかった、すぐに行く」と返事をして、電話を切った。そして立ち上がり、後ろに置いてあった上着を取りながら、部屋中の人に「用事ができた、先に失礼する」と言った。