第235章 森川記憶、ごめんなさい(5)

彼はあの願いの鐘が鳴る5秒間に、彼女にキスをし、告白もした。それは女将が言ったように「誠心誠意あれば霊験あり」なのだろうか。彼と彼女はいつか結ばれるのだろうか?

もしそれが本当なら、もし彼と彼女が一緒になれるなら、最後に彼女と結ばれるのであれば、少し遅くなっても構わない。彼は待つ覚悟がある……

彼女は彼の青春の中をしばらく通り過ぎただけなのに、彼の記憶の中には一生涯留まることになるだろう。

-

2月25日、森川記憶は『三千の狂い』の制作チームから電話を受け、3月14日に正式にクランクインし、横浜で開始式を行うと通知された。

3月11日、2日前倒しで、森川記憶は指導教官に休暇を申請した。

3月13日の朝、森川記憶は早朝の飛行機に乗り、和歌山に到着した。

現在の彼女はまだ芸能事務所と契約しておらず、アシスタントもいないため、すべて自分でやらなければならなかった。幸い4年前に横浜でドラマを撮影した経験があったので、森川記憶はスマホでルートを調べ、乗り継ぎの旅に出た。

まずタクシーでバスターミナルに行き、横浜行きのチケットを購入した。

横浜に到着後、森川記憶はまたタクシーを拾い、制作チームが手配したホテルに着いたのは午後3時だった。

一日中移動で疲れた森川記憶はシャワーを浴び、質素なベッドに横になるとすぐに眠りについた。目が覚めたときには既に夜の7時半で、ホテル2階のレストランが閉まってしまうのを恐れた森川記憶は、簡単に身支度を整えると急いで夕食を食べに階下へ向かった。

レストランはまだ営業していたが、既に食事時間を過ぎており、店内はがらんとして、ほとんど人がいなかった。

森川記憶は卵入りの麺を注文し、近くの空いているテーブルに座った。

しばらくすると、ウェイターが麺を運んできた。森川記憶が箸を取り、食べようとした瞬間、向かい側の個室の扉が開き、一団の人々が出てきた。

その人たちは、森川記憶がちょうど全員知っている『三千の狂い』の制作チームのメンバーだった。プロデューサー兼監督の髙橋綾人以外の幹部全員がおり、脚本家の佐藤未来もいた。さらに主演男優と女優の千歌も一緒だった。

一行はお酒を飲んでいたようで、俳優や監督の足取りがやや不安定だった。