第234章 森川記憶、ごめんなさい(4)

ほんの少し意識を取り戻した森川記憶は、心ここにあらずといった様子で答えた。「なんでもない……」

「本当に大丈夫?なんだか変な感じがするんだけど……」山崎絵里は心配そうな顔で続けた。

森川記憶は最初の言葉だけを聞いて、意識はまた先ほど願いの鐘が鳴った5秒間に戻っていた……

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火鍋店の外。

髙橋綾人は寒風吹きすさぶ窓ガラスの外に立ち、ガラス越しに森川記憶が山崎絵里に引っ張られて2階に上がり、その姿が完全に見えなくなった後、ようやく手を伸ばしてずっと振動していたポケットの携帯電話を取り出した。着信表示を見ると、先ほど上階のカフェで電話をかけて仕事の話をするために呼んだ菅生知海からだった。

電話に出ると、髙橋綾人は電話の向こうの菅生知海が急かす前に「すぐに行く」と言って、切断ボタンを押した。