第205章 あなたに会う身分（5）

「高橋さん、森川記憶さんは私と妻がホテルまで送り届けました。今、張さんが彼女の足首を診ています。」

「高橋さん、私はさっきもこっそりホテルの部屋の前まで行ってきました。張さんの話では、彼女の足首は筋や骨には異常がないそうです。」

髙橋綾人は空港のVIP待合室の窓際に立ち、窓の外に着陸しつつある飛行機を見つめながら、片手で携帯電話を耳に当て、もう片方の手でタバコを取り出して口元に運んだ。ライターで火をつけようとした時、電話から男の報告が聞こえてきた。「張さんは今、彼女に打撲の薬を塗っています。二、三日すれば自由に動けるようになるでしょう。」

髙橋綾人はライターをしまい、口元のタバコを指で挟んで下ろし、電話の受話器に向かって軽く「うん」と返事をして、話を聞いていることを示した。