第274章 あなたは一人じゃない、私がいるから(4)

「実は私もこんなことをしたくなかったの。でも余光さん、知ってる?私が撮影現場に入った初日から、ほとんど毎日お腹を空かせていたの。インスタントラーメンを食べ過ぎて吐き気がするほどだった。トイレに行きたくても、トイレが使われていて、撮影の邪魔をするのが怖くて我慢するしかなかった。一度なんて我慢しすぎて下腹部が痛くなったこともあるの。それからは水を飲むのも怖くなった。そうすればトイレに行く回数も減るし、問題も起きにくいから。そしたら今度は体が熱くなって、鼻血が出るようになって...」

この長い話を見ながら、髙橋綾人の脳裏には、夕方に初めて彼女の部屋に入った時に見たインスタントラーメンや、ゴミ箱に捨てられた血の付いたティッシュが浮かんだ。彼の心は何かに強く握りしめられ、鈍い痛みが波のように押し寄せてきた。