第275章 あなたは一人じゃない、私がいるから(5)

まるで見えない両手が、彼の首をきつく締め付け、息ができなくなるようだった。

部屋には彼一人だけで、静かすぎて自分の心臓の鼓動が聞こえるほどだった。とてもゆっくりと、とても重く、一拍ごとに、心臓から発せられる明確で骨身に染みる痛みを感じることができた。

本当に痛かった。痛くて歯が震え、痛くて全身が冷や汗をかき、痛くて心の奥底から寒気が湧き上がってきた。

彼は本能的にタバコを持つ手を上げ、口元に運び、強く一服吸い込んだ。

彼が彼女に出会う前は、髙橋余光の優秀さを引き立てることだけを考え、タバコを吸い、酒を飲み、喧嘩をするなど何でもやっていた。

彼が彼女に出会った後、彼女がタバコの匂いを嫌うことを知り、無理やり自分自身に禁煙を強いた。

彼はかなりのヘビースモーカーで、気分が悪いときはとくにタバコへの欲求が強くなった。そんなとき、彼はタバコに火をつけて気を紛らわせるが、特別に特別に辛いときを除いて、自分で吸うことはなかった。