第279章 あなたは一人じゃない、私がいるから(9)

レストランを出て、エレベーターに乗り込むと、森川記憶は階数表示を見つめ、少し迷った後、最終的に最上階のボタンを押した。

エレベーター内の赤い数字が上がっていくにつれて、森川記憶の心臓の鼓動は速くなり、思わず手に持っていた持ち帰り袋をきつく握りしめた。

目的の階に到着し、「ピン」という音と共にエレベーターのドアが開くと、森川記憶は深呼吸してから一歩踏み出した。

長い廊下を歩き、二度曲がった先に、ようやく髙橋綾人の部屋番号が見えてきた。

森川記憶は足を止め、髙橋綾人の部屋のドアをじっと見つめたが、なかなかドアをノックする勇気が出なかった。

彼女はドアの前をうろうろし始め、髙橋綾人の部屋の前に置かれた観葉植物の横を三度目に通りかかった時、突然深呼吸をして大股でドアに近づき、インターホンに手を伸ばした。