第302章 私たちは昔に戻れますか?(2)

森川記憶は髙橋綾人に感謝の言葉を伝えたいと思ったが、彼女の心の中の感情があまりにも強烈で、唇を動かしても声を出すことができなかった。

髙橋綾人は彼女が言葉を発せない様子を見て、表情が特に柔らかくなり、彼の唇の端にはかすかな笑みがこぼれた。彼は彼女をしばらく見つめてから、視線を彼女の後ろにあるケーキに移した。「ケーキを切りましょう。」

森川記憶は軽く「うん」と答え、その場にもう少し立ち止まり、波打つ心が少し落ち着くのを待ってから、花束を彼女の隣に立っていた山崎絵里に渡し、山田薄荷から渡されたナイフとフォークを受け取り、ケーキの前に歩み寄った。

……

ケーキを分け終わると、一行は再び森川記憶に祝福の言葉を述べ、撮影終了から今まで食事をしていなかった皆は、それぞれ散らばって、近くの長テーブルの上の食べ物セルフサービスコーナーに向かった。