第303章 私たちは昔に戻れますか?(3)

田中白は愛想よく四人に向かって微笑みながら「ありがとう」と言い、森川記憶の指先から奪ったグラスを通りかかったウェイターのトレイに置くと、記憶に向かって「行きましょう」と言って、率先して大きな窓の前のソファセットへと歩き出した。

森川記憶は本当に髙橋綾人が自分に話があると思い、四人に謝るような微笑みを向けてから、急いで歩き出し、田中白に追いついた。

道中、多くの人が会話を中断し、田中白と森川記憶に挨拶を送ってきた。

記憶は田中白が足を止めないのを見て、自分も立ち止まらず、田中白と同じように、挨拶してくる人々に微笑み返したり、軽く頷いたりした。

窓際のソファセットに近づくと、記憶はようやく、ソファに座っているのが髙橋綾人だけでなく、菅生知海もいることに気づいた。

二人はおそらく仕事の話をしていたようで、ソファの間に置かれたテーブルには書類が二部置かれていた。