第318章 『方圓數里』(8)

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髙橋綾人は森川記憶が連続して送ってきた二つのメッセージを見つめ、いつもは冷たい目元が少し柔らかくなった。

彼は「おやすみ」と返信し、彼女がもう返事をしないことを知っていたが、スマホをしまわずに、彼女が送ってきたメッセージを最初から最後までもう一度読み返した。

「髙橋綾人」という三文字を目にするたびに、彼の心は一層柔らかくなり、最後まで読むと、彼の全身の雰囲気さえも親しみやすいものに変わっていた。

彼は知らなかった、自分の名前が彼女の指先から打ち込まれると、こんなにも美しく見えるということを。

彼女は言った、なんて偶然だろう、彼と髙橋余光が贈ったプレゼントは同じブランドだなんて、さすが双子だね、と。

実際には双子だからこんな偶然が起きたわけではない。

ただ単に、髙橋余光が彼女に贈ったプレゼントは彼が贈ったもので、彼が彼女に贈ったプレゼントも彼が贈っただけのことだ。