第317章 『方圓數里』（7）

この文字を打ち込むと、森川記憶の心はまた少し恍惚としてきた。彼女は頭を振って、髙橋綾人が彼女にもたらしたこれらの感情をすべて頭から追い払おうとして、急いで話題を変えた。「余光さん、私は今夜初めて知ったんだけど、髙橋綾人って歌がとても上手いのね」

この文を送信した後、森川記憶の目の前の画面は、不思議と髙橋綾人が歌い終わった後に彼女と見つめ合った目に変わった。彼女はやっと落ち着いたばかりの心が、また制御不能に混乱し始めた。彼女は再び強く頭を振り、そして話題を変えることで自分の思考を切り替えようとした。「余光さん、さっき撮ったあのネックレス、髙橋綾人からの誕生日プレゼントなの……」

森川記憶は文字を打ちながら、ふとネックレスのブランドに目をやり、少し驚いた様子で画面上のキーボードを押し続けた。「……偶然だけど、髙橋綾人がくれたネックレスと、前に余光さんが私にくれた新年のプレゼント、同じブランドなのよ。さすが一卵性双生児ね、趣味も似てるわ」

メッセージを送信した後、森川記憶はネックレスの裏側にある「季」の文字を思い出し、「髙橋余光」からのメッセージを受け取る前に心に浮かんでいた疑問も一緒に送った。「でも、余光さん、不思議なことに、髙橋綾人がなぜ私にくれたネックレスの裏に「季」の文字を刻んだのかしら？「憶」の文字じゃないといけないんじゃない？」

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田中白はまだ隣でぶつぶつと不平を言い続けていた。

髙橋綾人は目を伏せ、森川記憶から送られてきた一連のメッセージを見つめながら、その表情は少し柔らかくなった。

彼女が彼の歌を褒めるなんて……これはかなり珍しい現象じゃないだろうか？

それに、彼女はネックレスをよく観察して、裏側に刻まれた「季」の文字まで発見したんだ……以前のように、彼のものを見るなり遠くに投げ捨てたいと思うのではなく。

髙橋綾人は森川記憶から送られてきたメッセージを何度も読み返した。彼女が最後に送った四つの文の中に、それぞれ「髙橋綾人」という三文字があることに気づき、彼の心拍数が突然速くなり始めた。彼は考える間もなく、指先が既に画面上を動き始めていた。「マンマン、君は綾人のことを、前ほど嫌いじゃなくなったみたいだね？」

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