第316章 『方圓數里』(6)

森川記憶が先ほど送ったメッセージに、返信が早かった。「髙橋余光」はまだスマホを見ているようで、すぐに彼女に返信した:「誕生日だったの?」

「うん」森川記憶は適当に一文字打って送信し、それからキーボードで続けて数回タイプして、「髙橋余光」に詳しく答えた:「髙橋綾人が私の誕生日を祝ってくれたの」

彼女は「髙橋余光」に対していつも話が多く、今回も例外ではなかった。誕生日の様子を一部始終「髙橋余光」に伝えた:「私は事前に何も知らなかったの。彼は誕生日を盛大に祝ってくれて、白雪姫やシンデレラまで出てきたわ。それって小さな女の子が好きそうなものでしょ?私はもうこんな歳なのに...でも、とても素敵で気に入ったわ」

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「菅生社長、信じられないかもしれませんが、前回あなたが撮影現場に来て、森川さんが怪我をしてから、高橋社長は人が変わったみたいなんです。私に森川さんを常に気にかけるよう命じて、さらに撮影スタッフ全員に声をかけて、森川さんに良くするように伝えろと...」田中白は菅生知海にグラスを軽く持ち上げ、憂鬱な表情で言った。

「そんなに大げさなの?」菅生知海は眉を上げた。

田中白は菅生知海が興味を持っている様子を見て、すぐに嘆きながら自分の苦労を語り始めた:「これが一番大げさなことじゃないんですよ。もっと大げさなことがあるんです。高橋社長は私が命令しても撮影スタッフが聞かないかもしれないと心配して、『褒賞令』なるものを作ったんです。この名前を聞いただけでも中二病っぽいでしょう?内容はもっと中二病的で、いわゆる褒賞令というのは、誰かが森川さんのために良いことをすれば...いや、良いことをするだけじゃなく、一つの笑顔でも報奨金がもらえるというものなんです」

「菅生社長、高橋社長はお金を持て余しているとしか思えませんよ。これはまだ初日なのに、知っていますか?私はすでに森川さんに向けた笑顔だけで5桁の金額を使いましたよ...それだけじゃなくて、昼に森川さんが寝ている時、高橋社長は撮影を中断させて、全員彼女を待たせ、私に休憩室の前に立って人々が騒がないように見張らせたんです...さらにひどいことに、高橋社長は私に森川さんを気にかけるという任務を年末評価に入れたんです。もし私がうまくできなければ、年末ボーナスを減らすと言うんです!」