山崎絵里は勢いよく飛び込んできたが、髙橋綾人を見た瞬間、口から出かけた言葉が急に止まり、全身が二秒ほど躊躇した。森川記憶と髙橋綾人の邪魔をしてしまったことに気づいたようで、急いで森川記憶に向かって駆け寄る足を止め、淑女のような控えめな様子に変え、髙橋綾人に挨拶した。「……高橋先輩、あなたもここにいたんですね?」
髙橋綾人は山崎絵里に軽く頷き、端正な顔には少しの不快感も見せなかった。
「あの、お二人が何かあるなら、私はまず……」山崎絵里は室内を指差し、後の「中に入る」という言葉を言い終える前に、森川記憶が声を出した。「どうしたの?」
山崎絵里:「何でもないよ、ただあなたを歌いに呼びに来ただけ。」
森川記憶は髙橋綾人の方を向いた。「じゃあ、私は彼女と先に行くね。」