第323章 コーラちゃんは誰?(3)

彼女は、彼女はよだれを垂らしたの?

森川記憶は言葉に詰まり、しばらくして恥ずかしそうに指先を上げ、自分の唇の端に残っている湿り気を触った。そして、こっそりと瞼を持ち上げ、髙橋綾人を見た。

彼女の微かな動きに気づいた髙橋綾人は、軽く横を向いて彼女を見た。ちょうど森川記憶の盗み見る視線を捉えた。

森川記憶は逃げ場がなく固まった。しばらくして、彼女はようやく唾を飲み込んだ。「わ、わ、私は...」

彼女は故意によだれを垂らしたわけではないと言いたかったが、言葉を詰まらせたまま長い間、恥ずかしくて言えなかった。最後には顔を赤らめて頭を下げ、小さな声で「ごめんなさい」と言った。

髙橋綾人の声は穏やかで心地よかった。「目が覚めた?」

彼は気にしていないの?

森川記憶は一瞬固まった後、瞼を上げて素早く髙橋綾人を見た。