第322章 コーラちゃんは誰?(2)

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森川記憶はお風呂を済ませ、シンプルなデザインのワンピースに着替えて、エレベーターで上の階から降りてきたとき、髙橋綾人と清水寒はすでにロビーの休憩スペースに座っていた。

髙橋綾人が最初に彼女を見つけたが、普段と同じようにさりげない様子で、彼女に話しかけることはなかった。

むしろ、隣で彼と話していた清水寒が、彼がエレベーターを見つめる視線に気づき、同じ方向に顔を向けた。森川記憶を見つけるとすぐに手を上げ、遠くから彼女に向かって振った。「記憶」

森川記憶は軽く微笑み返し、足取りを速めた。

彼女が近づくと、髙橋綾人と清水寒は前後して立ち上がった。

ロビーの回転ドアを出ると、車を準備して待っていた田中白がすぐに運転席から降り、車の前を回って助手席のドアを開けた。

田中白が「どうぞ」と言う前に、清水寒が前に二歩踏み出し、遠慮なく身をかがめて車内に入った。

田中白は手早く清水寒のために助手席のドアを閉め、それから車の後ろに二歩歩いて、後部座席のドアを開けた。

助手席が占領されてしまい、選択肢のない森川記憶は、田中白に丁寧に「ありがとう」と言って、先に車に乗り込んだ。

髙橋綾人がすぐ後に続いて座った。彼も彼女が入浴している間にシャワーを浴びたようで、彼の動きに合わせて、森川記憶ははっきりと爽やかなジャスミンの香りが漂ってくるのを感じた。

森川記憶は自分が何に緊張しているのかわからなかったが、指先で無言のうちに持ち歩いているバッグをぎゅっと握りしめ、体は無意識にドアの方へ少し移動し、自分と髙橋綾人との距離をわずかに広げた。彼女の呼吸は一瞬止まり、少しして元に戻った。

若い頃と同じように、デブはおしゃべりだった。田中白が車を発進させると、彼の口は止まることがなかった。

最初は森川記憶と話していて、ほとんどの話題は彼女の最近の調子や撮影現場での生活についてだった。

森川記憶は、デブが彼女が3年前に交通事故で3年間昏睡状態だったことを知っていて、それが彼女の痛みであることを理解しているからこそ、過去のことに触れなかったのだろうと思った。

しかし後半のほとんどの会話は、デブが髙橋綾人に向けて話していた。

高校時代の光景とまったく同じで、デブが十言えば、髙橋綾人は一言返す。