-
森川記憶はお風呂を済ませ、シンプルなデザインのワンピースに着替えて、エレベーターで上の階から降りてきたとき、髙橋綾人と清水寒はすでにロビーの休憩スペースに座っていた。
髙橋綾人が最初に彼女を見つけたが、普段と同じようにさりげない様子で、彼女に話しかけることはなかった。
むしろ、隣で彼と話していた清水寒が、彼がエレベーターを見つめる視線に気づき、同じ方向に顔を向けた。森川記憶を見つけるとすぐに手を上げ、遠くから彼女に向かって振った。「記憶」
森川記憶は軽く微笑み返し、足取りを速めた。
彼女が近づくと、髙橋綾人と清水寒は前後して立ち上がった。
ロビーの回転ドアを出ると、車を準備して待っていた田中白がすぐに運転席から降り、車の前を回って助手席のドアを開けた。
田中白が「どうぞ」と言う前に、清水寒が前に二歩踏み出し、遠慮なく身をかがめて車内に入った。