第321章 コーラちゃんは誰?(1)

誕生日の後、森川記憶は撮影現場での生活がかなり安定したように感じていた。

森川記憶は、この安定が一時的なものであることを知っていた。千歌が彼女をそう簡単に見逃すはずがない。しかし次に何が起こるか誰にもわからない状況で、彼女にできることは撮影に集中することだけだった。

とはいえ、撮影現場の生活も完全に退屈というわけではなかった。例えば、脚本家の佐藤未来が菅生知海に気に入られ、毎日花束が撮影現場に届けられるほど熱心に追いかけられ、撮影現場全体が騒がしくなっていた。

時は流れるように過ぎ、春が去り夏が来て、あっという間に『三千の狂い』の撮影も終盤を迎えていた。

夏に入った横浜は日に日に暑くなり、子供の日のこの日は今年最高の気温を記録した。最後のシーンを撮り終えた森川記憶の服は、内側から外側まで汗でびっしょりと何度も濡れていた。