第308章 私たちは昔に戻れますか?(8)

無数の疑問と戸惑いが森川記憶の心に押し寄せ、彼女の胸の中で絶えず渦巻き、衝突し、それまで比較的穏やかだった心の湖を激しく掻き乱した。

どう考えても、髙橋綾人がなぜこれほど大きく変わったのか理解できなかった。彼女の気持ちは徐々に焦りはじめ、ソファから立ち上がり、遠くないベランダに向かって歩き出した。外の空気を吸いたかったのだ。

田中白は森川記憶が動いたのを見て、自分も動いたが、彼は彼女に影響を与えることなく、常に彼女が心地よいと感じる距離を保っていた。

彼は彼女がベランダの入り口に到着するのを見て、それ以上前に進まず、近くに立ち止まる場所を見つけた。

森川記憶は手を伸ばしてベランダのドアを押そうとしたが、指先を上げた瞬間、ガラス越しに室内に背を向けて立っている髙橋綾人の姿が見えた。

ベランダには明かりがついておらず、室内から漏れる光は少し暗く、彼のシルエットをぼんやりと照らしていた。

彼は何か悩み事でもあるかのように、指先にタバコを灯していた。

森川記憶の動きは突然その場で止まった。彼女はガラス越しに髙橋綾人をじっと見つめた後、視線を外し、何もなかったかのように立ち去ろうとした瞬間、ベランダにいる髙橋綾人が突然体を横に向け、指先のタバコを手元の丸テーブルの灰皿に軽くはたいた。

彼は目の端で森川記憶を捉えた。最初は幻覚かと思い、一瞬躊躇してから顔を上げて見ると、森川記憶のまだ引き戻せていない視線と真正面からぶつかってしまった。

髙橋綾人は逆光に立っていたため、森川記憶は彼の表情をはっきりと見ることができなかったが、彼が自分を見ていることはわかった。彼女の心臓は一瞬ドキリと跳ねた。

髙橋綾人に現場を押さえられてしまったため、森川記憶はしばらく迷った後、立ち去る考えを諦め、軽く力を入れてドアを開けた。

彼女の動きに、彼女を見つめていた髙橋綾人は驚き、軽く瞬きをして、急いでタバコを灰皿に押し付けて消した。

ベランダに足を踏み入れた森川記憶は、後ろのドアを閉めながら、少し緊張した様子で髙橋綾人に声をかけた。「どうしてここに一人でいるの?」

「部屋の中にずっといると少し息苦しくなって、外の空気を吸いに来たんだ」ベランダの真ん中に立っていた髙橋綾人は、横に少し動いて、手すりの前のスペースの半分を森川記憶のために空けた。