第355章 これが私の答えだ(5)

「本当にそうね……」

クランクアップパーティーの開会の挨拶が終わり、森川記憶の前に座っていた二人が前後して席を立った。

彼らの会話をすべて耳に入れていた森川記憶は、しばらく席に座ったままでいてから立ち上がった。先ほどの空席を通り過ぎる際、少し身を前に傾けて椅子の背もたれに貼られた名前を見ると、「竹田周太」と書かれていた。

彼らが言っていた通り、確かに竹田社長の席だった……

森川記憶は視線を巡らせ、パーティー会場全体を見渡した。何度も探したが、竹田周太の姿は見つからなかった。

……つまり、先ほど聞いた話は本当だったの?

髙橋綾人は彼女に一言、竹田社長のことが嫌いかどうか尋ねただけで、彼女が答えもしないうちに、自分の判断で彼をパーティーから追い出したの?

撮影クルーの誰かが森川記憶に挨拶しに来たので、彼女は思考を切り替え、給仕から一杯のお酒を受け取った。