何かしたいと思ったが、森川記憶ははっきりとはわからなかった。ただ心が乱れていて、立ち上がって歩き回れば呼吸が楽になるような気がした。
彼女は宴会場の周りを、目的もなくあちこち歩き回っていた。自分でも何度目かわからないほど髙橋綾人と夏目美咲が入ったエレベーターの前を通りかかったとき、ちょうどエレベーターのドアが開いた。彼女の頭が反応する前に、体はすでにエレベーターの中に足を踏み入れていた。
森川記憶の部屋は髙橋綾人の部屋のすぐ隣だった。
宿泊階に到着し、エレベーターを出た森川記憶は長い廊下に沿って自分の部屋へと向かった。
髙橋綾人の部屋の前を通りかかったとき、森川記憶は彼の部屋のドアが半開きになっていることに気づいた。
部屋の中は明かりがついており、まぶしい光が彼のドア前の一帯を非常に明るく照らしていた。