第325章 コーラちゃんは誰？（5）

「寵妃？」デブは何か可笑しい言葉を聞いたかのように、フッと笑って言った。「夢見がいいね！俺たちが内緒で付けたあだ名は……」

デブはまだ言い終わらないうちに、先に笑い出し、少し間を置いてから続けた。「……大魔王！」

「国を傾け城を傾ける」や「絶世の妖姫」のようなあだ名を期待していた森川記憶は、デブの言葉を聞いて丸三秒間呆然とし、やっと眉をひそめながら、彼が言った三文字を少し不確かに繰り返した。「大魔王？」

「そうだよ、あの頃のお前は、まさに俺たちみんなの心の中の悪夢だった。お前が食堂で食事をする時、列に並ぶこと五分以上だと、綾人さんは怒る。お前が学校の門で宅配便を受け取る時、太陽に五分以上照らされると、綾人さんは怒る。掃除したばかりの教室で、水が多くて、お前が歩いていて不注意ですべると、綾人さんはまた怒る。お前が学校の花園の横を通るだけで、自動散水機に少し水がスカートにかかっただけでも、綾人さんは訳もなく俺たちを叱りつける。これらはまだいい方で、お前がテストの成績が悪かったり、生理が来て機嫌が悪かったりした時、これらは俺たちが全く避けられない天災人災なのに、綾人さんはそれでも俺たちに怒りをぶつけてくる……」何年も経った今でも、あの苦しい日々を思い出すと、デブはやはり胸が詰まる思いでグラスを取り、ゴクゴクと何口も飲んだ。「……お前が大魔王じゃなかったら、何なんだ？」

デブの恨み言をすべて耳に入れた森川記憶は、思わず唇の端を少し噛んだ。

しかし彼女の笑顔がまだ完全に広がる前に、デブはまた声を出した。「お前は普通の大魔王じゃない、人が見れば恐れ、花が見れば枯れるような大魔王だ！」

彼女はそんなに恐ろしいのか？人が見れば恐れ、花が見れば枯れる？

森川記憶は心の中で密かに「ふん」と鼻を鳴らした。

彼女はデブがここまで言えば十分だと思っていたが、デブは酒を一口飲み込んで、さらに付け加えた。「しかも夢の中で寝ていて、お前のことを思い出すだけで冷や汗をかくような大魔王だ。略して闇の大魔王！」

若い頃、彼らは内緒で彼女のことをそう呼んでいたなんて！

ひどい！

森川記憶は怒りはしなかったが、少女特有のわがままが心に湧き上がってきた。彼女は憤然と頭を回し、窓を通して、遠くの通りに多くの屋台が並び、多くの人々が列を作って買い物をしているのを見た。