第406章 森川記憶、話し合おう(6)

おそらく夜も更けていたのだろう、薬局のレジ係はレジ台に伏せて居眠りをしていたが、「いらっしゃいませ」という案内音が聞こえると、ぼんやりと頭を上げ、森川記憶に向かって尋ねた。「お嬢さん、何をお求めですか?」

四年前、彼女はすでに一度苦い経験をしていた。四年後の今、同じ過ちを犯した状況で、万が一に備えないわけにはいかなかった。

彼女はもう妊娠するわけにはいかなかった……

森川記憶は指先で服の襟元をつまみながら、小さな声で三文字だけ答えた。「アフターピル」

少し間を置いて、森川記憶は既に二日近く経っていることを思い出し、付け加えた。「72時間効果のものを」

レジ係はおそらくこのような場面に慣れているのか、表情を変えることなく下から薬の箱を一つ取り出し、森川記憶の前に置いて、価格を告げた。

支払いを済ませ、外に出ると、森川記憶は隣の売店に立ち寄り、水を一本買った。道端に立ち、薬を取り出して口に入れ、水で飲み込んだ。

薬が確実に胃に入ったことを確認すると、彼女の指先は思わず薬の箱をきつく握りしめていた。

自分がどうなってしまったのか分からなかった。体がひどく震え、しばらくして、ようやく落ち着いた。

手のひらに握りしめていた空の薬の箱をゴミ箱に捨て、森川記憶は歩き続け、ホテルへと向かった。

ホテルの部屋に戻ったときには、既に午前4時だった。

森川記憶はシャワーを浴び、洗面台の前で体を拭いているとき、鏡越しに自分の体に残る無数の痕跡を見た。

これだけ時間が経っているのに、それらの痕跡はまだはっきりと残っていた。

森川記憶は何故か目に痛みを感じ、急いで視線を外し、水滴を雑に拭き取り、バスローブを引っ張って、自分の体をしっかりと包み込んだ。

ベッドに戻り、森川記憶は携帯電話を手に取り、一目見た。

わずか3時間の間に、電話には数十件の不在着信が入っていた。すべて髙橋綾人からのもので、彼からのメッセージもあった。

「記憶ちゃん、電源を入れたのは分かっているよ。僕のメッセージも見えているはずだ。返事をくれないか?」

「もし本当に今はまだ会いたくないなら、時間をあげるよ。でも、いつになったら会ってくれるのか教えてくれないか?ちゃんと話し合いたいんだ」