第369章 一千本の修正液(9)

彼女はじっと田中白を見つめ、突然くすくすと笑い始めた。そして立ち上がり、髙橋綾人を避けながら、ふらふらと田中白に向かって歩いてきた。「髙橋綾人、やっと降りてきたのね…」

森川さんは、彼を高橋社長と間違えたのか?

田中白は驚愕して思わず髙橋綾人の方を見た。男の彼を八つ裂きにしそうな眼差しに触れた瞬間、彼の足はがくりと崩れ、危うく地面に膝をついてしまうところだった。

田中白は命を守るため、反射的に弁明しようとした。急いで話したため、言葉が噛み合わなくなった。「森、森川さん、私、私は…」

田中白の言葉が終わらないうちに、大量のお酒を飲んですでに足元がふらついていた森川記憶が、突然よろめいて横に倒れかけた。

本能的に、田中白はすぐに手を伸ばして森川記憶の腕を支えた。

田中白を髙橋綾人と勘違いした森川記憶は、立っていられなかったため支えを求め、彼に支えられると、そのまま彼の腕に沿って、彼の体に寄りかかった。