第389章 綿菓子はなぜお酒の味がするのか（9）

佐藤未来は菅生知海に向かって「ありがとう」と言うと、テーブルの上の救急箱から紅花油を取り出し、手のひらに垂らして、腫れた足首に塗り始めた。

菅生知海は彼女が医学を学んでいたことを知っていたので、彼女が医者を呼ぶ様子がないのを見て、きっと骨や筋を捻挫していないから自分で処置しているのだと分かった。

彼は余計な言葉を発せず、そのまま隣に座り、彼女が足首をマッサージする動きを見つめていた。

彼女の指は美しかった。おそらく長年キーボードを打ち続けていたせいか、あるいは医療関係者特有の潔癖症のせいか、他の女の子のように長い爪を伸ばしておらず、全体的に清潔で見た目にも良かった。

菅生知海は思わず何度も見てしまい、彼女が再び手のひらに紅花油を垂らした時になってようやく顔を上げ、彼女の顔を見て、低い声で尋ねた。「どうしてそんなにお酒を飲んだの？」

佐藤未来は手を止めずに、「付き合いで必要なこともあるの。でも私の問題でもあるわ。お酒に強くなくて、少し飲むだけで吐いてしまうから」

「女の子が一人で外にいるときは、やっぱり気をつけた方がいい。飲まなくていいなら飲まない方がいい」

菅生知海の口調はどこか気のない感じだったが、佐藤未来の足首をマッサージする動きは一瞬止まった。

まるで...幼い頃から大人になるまで、誰も彼女にこのような心配の言葉をかけてくれたことがなかったかのように...

佐藤未来はまぶたを伏せ、腫れた足首を見つめながらしばらく黙っていた。菅生知海に「うん」と返そうとした矢先、菅生知海の声がまた聞こえてきた。「でも、話は変わるけど、お酒を飲まなくていい方法がもう一つあるよ」

佐藤未来は口元まで出かかった言葉を飲み込み、顔を上げて菅生知海を見た。

菅生知海は笑顔を浮かべて言った。「僕と一緒にいれば、僕の女は他人と付き合う必要はない」

なんで急にそんな話題に持っていくの...

佐藤未来は以前と同じように、彼の言葉を無視することを選び、頭を下げて足首のマッサージを続けた。

佐藤未来は化粧をしていたので、足首の捻挫の処置を終えた後、洗面所に行ってメイクを落とした。菅生知海は彼女が転ばないか心配で、ずっと彼女の側について回っていた。

佐藤未来が歯を磨いている間、菅生知海は腕を組んでドア枠に寄りかかり、彼女を見つめていた。