第470章 お嬢様、お届け物が来ました(10)

彼女はゲームの中の男性とチャットしていて、楽しそうなの?

髙橋綾人は眉間を少し寄せ、さりげなく視線を戻し、手を上げてパソコンの音量を少し下げた。

会議に集中しているように見える髙橋綾人だが、実際は注意力のすべてが森川記憶のスマホに向けられていた。ビデオ会議の話し声を通して、彼は何とか森川記憶のスマホから山崎絵里の声を聞き取ることができた。「わあ、やっと勝った、嬉しい!」

その後、男性の声が響いた。「いとこ、まず僕を友達追加して、あとで続けて遊ぼう」

森川記憶が髙橋綾人の隣でゲームをしていた時、髙橋綾人は一瞬で彼女のIDを見た。「いとこ超美人」と呼ばれていた。だからこの男が呼んでいるのは森川記憶?

髙橋綾人の頭の中の考えが固まったとき、森川記憶の柔らかい声が聞こえてきた。「はい、いいよ」

いいよ?いいわけないだろ!髙橋綾人は心の中で文句を言い、森川記憶の方をちらりと見ると、彼女が指先で画面をタップし、また音声が流れ始めた。

彼はこのゲームをプレイしたことはなかったが、彼女がここ数日プレイしているのを見て、大まかに把握していた。おそらく新しいゲームを始めたのだろう。

この試合では、男性の声は森川記憶と山崎絵里にゲームの指示を出すのではなく、終始森川記憶とチャットしていた。

「いとこ、どこの出身?」

「京都よ」

「いとこ、こっちに来てブルーバフ取って」

山崎絵里:「彼女はサポート役なのに、何のブルーバフよ?!納得いかないわ」

山崎絵里は無視され、男性の声はまた「いとこ、何歳?」と呼びかけた。

いとこ...いとこじゃねえよ...髙橋綾人はだんだん落ち着かなくなってきた。

「いとこ、よくWeChatを使う?それともQQ?」

「WeChat」

「いとこ、僕のWeChatのIDは...」森川記憶のスマホから一連の数字が聞こえた。「...メモした?もしなければ、ゲーム内で送るから、スクリーンショットを撮って保存してね。それは僕の電話番号でもあるから、後でWeChatで友達追加してね」

ゲームの友達追加だけならまだしも、WeChatの友達まで追加するつもり?

髙橋綾人の手はこっそりと拳を握りしめた。突然、スマホから相手を引きずり出して殴りたい衝動に駆られた。