言い終わると、林田部長は隣の椅子を引き、座った。
森川記憶は林田部長が自分の前に投げ出した書類をしばらく見つめてから、手を伸ばして書類を正し、開いた。
彼女は書類に表示された「契約解除」という二文字を見たとき、まつ毛が軽く震え、座っている姿勢が明らかに硬くなった。
昨日、松本儀子が車で彼女を家に送る途中、彼女は林田部長と松本儀子の電話を聞いていた。その時、林田部長が怒り心頭だということはわかっていたが、会社に呼び出されたのは、せいぜい叱られるだけだと思っていた。まさか直接契約解除書を目の前に投げつけるとは思わなかった……
森川記憶の隣に座っていた松本儀子は、森川記憶が伏し目がちに書類を見つめる様子がおかしいと感じ、手を伸ばして書類を自分の前に引き寄せた。彼女はちらりと見ただけで、眉間にしわを寄せた。「林田部長、事態はそこまで深刻ではないでしょう?」