第483章 私が守る人に、誰が文句を言えるのか?(3)

「役立たずのクズ……」確かに間違いは彼女にあったが、林田部長の容赦ない言葉に、森川記憶は極度に恥ずかしさを感じ、謝罪の言葉がどうしても口から出てこなかった。

「林田部長、確かに森川記憶には非がありますが、あなたの言葉は少し行き過ぎではないですか?」松本儀子は眉間にしわを寄せ、言葉の端々に明らかな不賛同の意を示した。

「行き過ぎ?」林田部長は軽く笑った。「尊敬を得たいなら、尊敬に値する部分がなければならない。こんな何の取り柄もない人間が、他人の言葉が行き過ぎかどうか文句を言う資格があるのか?」

松本儀子は言葉に詰まり、黙り込んだ。

会議室全体が静寂に包まれた。

約2分後、林田部長は森川記憶がなかなかペンを取って署名しないのを見て、十分な苛立ちを込めて再び促した。「私は本当にここであなたと時間を無駄にする余裕はないんです。早く署名してください。」

森川記憶は唇の端をきつく噛み締め、伏せた目で机の上の契約解除書を見つめた後、目を上げて林田部長を見た。「これは髙橋綾人の意向なのですか?」

最初に彼女と契約を結んだのは彼だった。あの夜、琵琶湖のほとりのホテルの部屋で、彼は彼女に「信じてくれますか?」と尋ねた。

それからこれほど時間が経っても、今思い出すと、彼女の心はまだ揺れ動いていた。

彼女は知っていた。この会社では、林田部長の立場は彼女の去就を完全に決定できる。しかし、なぜか突然髙橋綾人のことを思い出し、彼女との契約解除が彼の意向でもあるのかを知りたかった。

「森川さん、この件については私にも決定権がありますし、仮に私に決定権がなくても、これは私一人の決定ではなく、昨夜の取締役会全体で通過した決定です。会社の責任者は全員ここにいますから、一人一人聞いてみてもいいですよ!」

林田部長の言葉が終わると、森川記憶の向かいに座っていた数人の会社責任者たちは、次々とうなずいた。

林田部長は全員がうなずくのを待ち、森川記憶を一瞥して、しばらく考えてから再び口を開いた。「あるいは、森川さん、突然高橋社長の名前を出したのは、何か別の意味があるのですか?あなたと高橋社長の関係が並々ならぬものだと言って、彼を使って私を脅そうとしているのですか?」