第502章 これから先、私の心の中にあなたがいる（2）

髙橋綾人の背中がピンと張りつめ、そのまま彼は立ち尽くした。

彼はこの全てが夢のようで、はかなく非現実的に感じた。

彼は動くことができなかった。少しでも動けば、彼女の腕が彼の腰から消えてしまうのではないかと恐れていた。

森川記憶も自分がどうしてこうなったのか分からなかった。ただ突然、彼を抱きしめたくなったのだ。

彼女は顔を彼の腹部に埋め、彼のシャツ越しに彼の体温を感じることができた。

その温もりは彼女に異常なほどの安心感を与え、一日中複雑で抑圧されていた彼女の心も徐々に落ち着いていった。

オフィスは静かで、森川記憶はこのように一方的に髙橋綾人を抱きしめたまま、長い間じっとしていた。ようやく彼女の目の涙が徐々に止まった。

先ほど激しく泣いたせいで、彼女は時々しゃっくりをしていた。