第516章 これから先、私の心の中にはあなたがいる(16)

森川記憶がここまで話すと、佐藤健はようやく思い出した。「ああ、そういえばそんなことがありましたね。あなたは...」

森川記憶は佐藤健が自分の名前を全く覚えていないことがわかったので、適切に言葉を継いだ。「私は森川記憶です。」

「そうそう、森川記憶さん、こんにちは。」佐藤健は森川記憶に丁寧に手を差し出した。

「こんにちは。」森川記憶は微笑みながら佐藤健と形式的に握手し、手を離すとき、何気ない様子で口を開いた。「あなたと千歌さんは、この4年間ずっと仲が良いんですね。4年前、彼女はSNSであなたの写真を投稿していましたし、4年経った今でも、あなたとコラボレーションしたいと言っていますよね。今夜も一緒にステージで歌うと聞きました。」

森川記憶の澄んだ優しい声が口から滑り落ちると、彼女は佐藤健の顔にまだ笑顔が浮かんでいるものの、目元には冷たさが漂っているのを見た。