第485章 私が守る人に、誰が文句を言えるのか?(5)

髙橋綾人は林田部長の言葉を聞いても、まだ口を開く気配はなかった。

彼は松本儀子から電話を受けるとすぐに戻ってきた。飛行機は13時間の長旅を経て、今朝の京都時間8時に成田国際空港に着陸した。

飛行機を降りるとすぐに、彼は家にも寄らず、会社に直行した。

彼と田中白が会社のロビーに入ったとき、ちょうど今日脚本会議のために来ていた佐藤未来と出くわした。彼女は受付の女性と話していて、彼と田中白に気づいていなかった。受付の女性がアメリカにいるはずの彼が会社に現れたことに驚いて挨拶するまで、佐藤未来は彼らの方を振り向かなかった。

しかし、受付の女性の驚きとは対照的に、佐藤未来は彼が何のために戻ってきたのかを知っているかのように、受付に寄りかかっていた体を起こし、ハイヒールで彼の前まで歩いてきて言った。「記憶ちゃんも会社にいるわ。林田部長に呼ばれて、第二会議室にいるわ」