最後の音が落ち着くと、森川記憶はひと時も留まることなく、足早に立ち去った。
おそらく千歌に対してあんな言葉を言った時に、彼女が千歌を見て心に浮かんだ不快感をすべて発散させたからだろう、森川記憶は美容院のフロントに向かう途中、何度も口元が緩んだ。
フロントの女性は森川記憶が来るのを見ると、すぐに彼女を森川叔母さんのいる部屋へと案内した。
森川叔母さんは洋風のソファに座り、年配の女性技術者と低い声でどのようなメニューを選ぶか相談していた。
フロントの女性が森川記憶を座らせた後、携帯しているトランシーバーに数字を告げ、約1分後、個室のドアが開き、森川叔母さんの隣に立っている女性技術者よりも若い女性技術者がバラの花茶を持って入ってきた。
フロントの女性が去った後、若い女性技術者はメニュー表を森川記憶に渡し、しゃがんで森川記憶の足を取り、温かい足湯に入れた。