第556章 深い愛と彼との、思いがけない出会い(16)

礼儀正しさから、森川記憶はドアを直接開けることなく、手を伸ばしてドアをノックしようとした。

しかし彼女の指先がドアに触れる前に、髙橋綾人特有の澄んだ声がオフィスから聞こえてきた。「森川記憶の件は今どうなっている?」

突然自分の名前を聞いた記憶は、ノックする動作を思わず止めた。

続いてオフィスから田中白の声が聞こえてきた。「今でも検索ランキングに載っていますが、話題性は下がってきていて、順位も下落しています。」

髙橋綾人が田中白に自分のことを尋ねたのは、彼女を心配しているのだろうか?

言葉にできない喜びが記憶の心に湧き上がり、思わず唇の端が軽く上がった。

「話題性を下げてはいけない…」髙橋綾人がまた口を開いた。先ほどと同じく美しく澄んだ声色だった。

しかしこの簡単な数語が、記憶の頭を混乱させた。