第598章 発見された結婚証明書(1)

ドアの前に着くと、外から髙橋綾人の声が再び聞こえた。「記憶ちゃん」

森川記憶は息を詰まらせ、ドアの前でしばらく立ち尽くした後、深く息を吸い込み、手を伸ばしてドアを開けた。

記憶が出てくるのを見て、髙橋綾人はすぐに一歩前に進み、記憶の肩をつかんで上から下まで彼女を見渡した。彼女が無事であることを確認してから、再び声をかけた。「記憶ちゃん、どうしたの?」

以前から髙橋綾人は彼女に触れることはあったが、彼女が自分が彼を愛していることに気づいた今、彼のこの接触は彼女の体を思わず小さく震わせた。そして彼に握られている肩の部分は、まるで火がついたかのように熱く、心臓を焦がすようだった。彼女は肩を振りほどこうとしたが、少し惜しい気持ちもあり、彼女が葛藤している間に、髙橋綾人の声が再び聞こえてきた。「記憶ちゃん?どこか具合が悪いの?」

森川記憶は急いで意識を髙橋綾人が自分の肩を握っている手から引き戻し、まず髙橋綾人に向かって首を横に振り、それからでたらめな理由をつけた。「私、具合が悪いわけじゃないの。ただ、急いで来たから食べるのを忘れちゃって、さっきお腹が痛くなって、吐き気がして、洗面所に来たの……」

この言葉を聞いて、髙橋綾人は密かにほっとした。「何か食べたいものある?ホテルに作らせるよ」

そう言いながら、髙橋綾人は記憶の肩に置いていた片手を離し、もう一方の手で彼女の腕をすべり降り、彼女の細い手首をつかんで、リビングの机の方へ連れて行った。

記憶を机の前の椅子に座らせると、髙橋綾人はホテルの24時間ルームサービスのメニューを探し出し、記憶の前に差し出した。

「見てみて、何が食べたい?」髙橋綾人は言いながら、机の上の内線電話を取り、ホテルのルームサービス部門に電話をかけた。

京都から名古屋へ、そしてホテルまでの移動で、丸々4、5時間もかかり、森川記憶は本当に少しお腹が空いていた。彼女は頭を下げ、メニューを素早く一通り見て、髙橋綾人に向かって「牛肉の焼きそば」を軽く指さした。

「牛肉の焼きそば」髙橋綾人は受話器に記憶が食べたいものを伝えた後、振り返って記憶に尋ねた。「他には?」

記憶は首を横に振った。

髙橋綾人は眉間にしわを寄せ、メニューを自分の前に引き寄せ、見ながら受話器に向かってまた話し始めた。「おかゆも一つ追加して、砂糖入りで、砂糖は多めに……」