第599章 発見された結婚証明書(2)

森川記憶は髙橋綾人の言葉を聞いて、考えもせずに口走った。「あなたと寝たい……」

森川記憶の目の前で手を振った髙橋綾人は、携帯の振動を感じ、ポケットに手を入れた。

携帯を取り出し、目の前に持ってきたところで、まだロック画面を解除して何のメッセージか確認する間もなく、森川記憶の「あなたと寝たい」という言葉が彼の耳に入ってきた。

髙橋綾人は一瞬固まり、その三つの言葉の意味を理解すると、彼の背筋がピンと張り、手の力が急に抜け、携帯が指先からすべり落ち、机の上に重く落ちて「バン」という大きな音を立てた。

森川記憶はその音に驚いて我に返った。彼女は瞬きをして、視線を髙橋綾人の顔に向けた後、自分が先ほど夢中になっていた状態で、髙橋綾人に何を言ったのかを後になって気づいた。

森川記憶の目は突然大きく見開かれた。

髙橋綾人が彼女に何を考えているのか尋ねたとき、彼女の頭の中にあったのは、ちょうど髙橋綾人との東京での一夜のシーンだった。その瞬間、彼女は髙橋綾人のボタンを外したシャツを見つめ、彼のシャツを脱がせたいという衝動に駆られていた……しかし、そうだとしても、彼女は髙橋綾人に自分が何を考えていたのかを正直に認めるべきではなかった!

森川記憶は突然慌てふためいた。彼女は目を左右に動かしてしばらく考えた後、再び口を開いた。「い、い、い、いいえ、そうじゃないの、言い間違えたの。私が言いたかったのは、私、私はさっき東京であなたと寝たことを考えていて……」

ここまで言って、森川記憶は急に口を閉じた。彼女は自分の舌を噛み切りたいほど後悔した。

これは何の話だ?彼女は説明するにしても、説明すればするほど、自分が先ほど考えていたことをすべて白状することになるなんて……

森川記憶は髙橋綾人を見る勇気もなく、無意識のうちに言い訳を続けた。「……髙橋綾人、冗談よ。暇だからって、どうして私が東京でのあの夜のことを考えるわけ……」

なんてこと……これは「泥棒が銀を盗んでいない」と言いながら自白しているようなものじゃない?

親を困らせる人も、子供を困らせる人も見たことがあるけど、彼女のように自分自身を困らせる人を見たことがある?

彼女は自分を弁護するどころか、完全に自分の墓穴を掘っているじゃないか……