弁当箱を置いた後、田中白は再び車のエンジンをかけた。
病院を出た時と同じように、車内は静寂に包まれていた。
「帝国ホテル」から森川記憶の家までは遠くなく、10分ほどで車は森川家のあるマンションに曲がり、森川記憶の家の前に停車した。
田中白は車から降り、森川記憶のためにドアを開け、ついでに弁当箱を持ち出した。
森川記憶が車から降りると、田中白はすぐに弁当箱を彼女の前に差し出した。「森川さん、このお持ち帰りをどうぞ。夜はやはり何か食べた方がいいですよ。」
森川記憶は受け取らなかった。「食欲がないから、あなたたちが持って帰って食べてください。」
「食欲がなくても少しは食べないと、胃に良くないですよ…」田中白がもう少し説得しようとしたとき、反対側のドアが開き、髙橋綾人が車から降りてきた。