第607章 発見された結婚証明書（10）

その知らせは田中白が髙橋綾人に伝えたものだった。

朝の7時前、体内時計が習慣づいていた髙橋綾人は、時間通りに目を覚ました。

彼はベッドに座り、ヘッドボードに寄りかかりながら、携帯で経済ニュースを少し見た。眠気が完全に消えてから、ようやくベッドから出て洗面所へ向かった。

洗顔を終えて出てきた髙橋綾人は、きちんと服を着て、時計を見ると、ちょうど8時を過ぎたところだった。森川記憶をあと30分ほど寝かせてから朝食のために起こそうと思い、彼は書斎の机に向かってパソコンを開いた。

指紋認証を入力してパソコンのホーム画面に入ったところで、ホテルの部屋のドアがノックされた。

ドアを開けると、田中白が立っていた。彼の表情は重く、不安が混じっていた。

彼が何も言わなくても、髙橋綾人は何か問題が起きたことを察した。彼は眉間にしわを寄せ、ドアを開けて田中白を中に入れてから、ようやく口を開いた。「何があった？」

田中白はしばらく躊躇してから、話し始めた。

田中白の言葉が一言一句はっきりと髙橋綾人の耳に届くにつれて、彼の表情はだんだんと冷たく凍りついていった。

田中白が話し終えると、髙橋綾人の表情は今にも水滴が落ちてきそうなほど暗く沈んでいた。

このような髙橋綾人の姿を、田中白は最もよく知っていた。それは最も危険で致命的な状態だった。

この数年間、彼は髙橋綾人のこの様子を見たことがなかったわけではないが、毎回見るたびに、彼は情けないことに怖くて大きな息もできず、足までもが震えてしまうのだった。

部屋の中は長い間静かだった。やがて、氷のように冷たい髙橋綾人の声が聞こえてきた。「その情報は確かなのか？」

「間違いありません」田中白は答えた。しばらくして、髙橋綾人が信じていないと思ったのか、田中白はさらに言い足した。「彼らの人間が直接言ったことです。間違いないはずです」

髙橋綾人は再び黙り込んだが、彼の顔に浮かぶ冷たさは、肉眼で見えるほどの速さで、彼の目の奥底まで急速に広がっていった。

田中白はしばらく待ち、髙橋綾人が何も言わないのを見て、弱々しく唇を動かした。「高橋…」

「航空券を予約しろ！」田中白の声が髙橋綾人を驚かせたかのように、彼は瞬時に口を開いた。「京都に戻る！」