第620章 発見された結婚証明書(23)

送信ボタンを押した後、森川記憶はしばらく考えてから、さらに数文字を打ち込んだ。「あなたは?夕食は食べた?」

「うん、食べたよ」髙橋綾人は忙しくなかったようで、メッセージの返信はやはり早かった。

ちょうどスプーンを手に取って食事をしようとしていた森川記憶は、髙橋綾人の返信を見て、スプーンを口に入れながら、また键盘を打ち始めた。「今日、微博を見たら、ネットユーザーの反応を見たわ。この前のスキャンダルは晴れたみたいで、多くの人が私の微博に謝罪に来てくれたの。千歌の微博も見に行ったけど、みんなひどく彼女を罵っていて...」

森川記憶は寝る前に微博を見た感想を習慣的に髙橋綾人に送った。

彼女はかなり長い文章を送ったが、髙橋綾人は本当に一字一句真剣に読んでいたようで、しばらくして彼女は彼からのメッセージを受け取った。「自業自得だ」

森川記憶は、髙橋綾人のこの四文字が千歌を指していることを知っていた。食べ物で膨らんだ頬でも、彼女の口角には思わず笑みが浮かんだ。

彼女はスプーンを置き、口の中の食べ物を噛みながら、髙橋綾人にメッセージを送り続けた。

彼女は微博の話題にはあまり長く触れず、すぐに話題を変えた。「今何してるの?」

「夜景を見てる」

「きれい?」

送信ボタンを押すと、画面に「メッセージが既読されました」と表示されるや否や、髙橋綾人からのビデオ通話が入ってきた。

森川記憶は本能的に頭を上げ、食卓の正面にある鏡に向かって、寝起きで乱れた髪を整えてから、通話に応答した。

森川記憶は、髙橋綾人が自分が電話に出る前に鏡の前で身だしなみを整えていたことを知るはずがないと分かっていたが、髙橋綾人の端正な顔が画面に現れると、彼女は心虚になって言い訳をした。「今、スープを温めに行ってたの」

なんてこと、彼女は以前こんなじゃなかった。恋に落ちた女性は皆、こんなに奇妙な小さな思いを抱くものなのだろうか?

森川記憶の小さな思いとは対照的に、髙橋綾人は彼女が少し遅れて電話に出たことを全く気にしていなかった。彼は軽く「うん」と返事をしただけで、すぐにスマホのカメラを前面から背面に切り替えた。

すると、無数の灯りが輝く夜景が森川記憶のスマホ画面に映し出された。