第124章 【124】彼女に直接薬を塗る1

二人が先ほど引っ張り合ったせいで、衣服は乱れ、一筋の黒髪が額の前に散っていた。

その姿はいくぶん狼狽えていた。

そして、ドアの前に立つ二人は、目の前の光景を見ていた。

顔の表情はそれぞれ異なっていた。

橋本健太の顔には特に表情がなかった。

一方、南条飛鴻は、下げた片手を握りしめ、顔色は極めて悪かった。

夏野暖香はドアの前の二人に気づくと、頬が一瞬にして紅く染まった。

数筋の髪が額に垂れ、恥ずかしさと当惑の様子が、どこか艶やかさと色気を帯びていた。

「帰ってきたの?」南条陽凌は怠惰な態度で床から立ち上がり、顔には狼狽の色はなく、むしろ少し輝きを帯びていた。

隣の夏野暖香とは、まさに鮮明な対比を成していた。

南条飛鴻はそこに立ち尽くし、数秒間呆然としていた。傷ついた表情で、目の縁も次第に赤くなり、そして頭を回すとドアの外へ走り去った。

夏野暖香は緊張して一歩前に出たが、南条陽凌に阻まれた。

「彼は大丈夫だ」と彼は淡々と言った。

そしてドアの外に立っている従者に命じた。「武田達也、早瀬遠、彼について行け。彼が何か問題を起こさないようにしろ」

二人は声を聞くと、揃って言った。「はい、皇太子!」

そしてこの時、ドアの前で果物の袋を持っていた橋本健太は、南条陽凌に手を振り、口を開いた。「飛鴻を見てくるよ、あなたたちは続けて」

言い終わると、果物を置いて、身を翻して去った。

夏野暖香はその瞬間、まさに地に潜りたい思いだった。

特に橋本健太の言葉は、彼女をほとんど一瞬のうちに、鼻が酸っぱくなるほど感じさせた。

無意識に身を翻し、下唇を強く噛んだ。

一方で自分の服と髪を整えていた。

南条陽凌は彼女の側に歩み寄った。

「大丈夫だ、飛鴻のことは心配しなくていい。彼は小さい頃から気が短い。ただ私たちが一緒にいることを受け入れられないだけだ。でも、いずれ現実を受け入れさせなければならない」

夏野暖香は彼を一目も見なかった。

また声も出さなかった。

自分を整えると、身を翻してドアの方へ歩いていった。

足の痛みのため、歩き方はあまりスムーズではなかった。

その姿は南条陽凌の目には、どれほど頑固で、さらに少し怒りを含んでいるように映った。

彼の顔色は沈んだが、彼女の足の血痕を見た。

すでに血が脛を伝って流れ落ちていた。