あの頃、南條漠真と夏野暖香はよく花壇に座って、子供たちが列を作って興奮しながらブランコで遊ぶ様子を見ていた。
南條漠真は言った、「七々、安心して。僕が大きくなったら、必ずこれより百倍も素敵なブランコを作ってあげるよ!」
「お花も付けてね。それと、もっと柔らかい椅子が欲しいな。あの木の板はお尻が痛くなるから」
「いいよ、七々のために世界で一番柔らかくて快適なブランコを作って、あなたを最も幸せな姫にしてあげる!」
あの頃の自分は、いつもそれだけで満足していた。ブランコ一つで、自分が姫になれると思っていた。
でも今、夏野暖香はブランコに座りながら、突然理解した。自分を姫にしてくれるのは、豪華でロマンチックなブランコではなく、彼女のためにブランコを押してくれる王子様なのだと。
夏野暖香の胸に酸っぱい感情が湧き上がり、目にも霧がかかったようになった。彼にまた会えるかどうかわからない。でも、会えたとしても何になるだろう?彼女はもう昔の七々ではなく、別の夏野暖香になっている。南條漠真が彼女に会ったとしても、彼女が七々だとは信じないだろう!
それに、今の彼女は既に他人の妻なのだ。
夏野暖香は頭を振って、感傷を頭の後ろに追いやった。一人でブランコを揺らしながら、自分がまだあの頃の、南條漠真と一緒にいた無邪気な七々であるかのように想像していた。
十三歳の夏野暖香は、とても幸せで満足しやすかった。
夏野暖香は目の前の光景をうっとりと見つめていたが、突然、後ろから誰かがブランコを押す感触があった。彼女の脳裏に南條漠真の姿が浮かんだ。流水のように澄んだ目、玉のように優しい笑顔。
夏野暖香は子供の頃のように笑って言った。「もっと速く!もっと速く!」
その人は本当に少し力を入れて押した。
夏野暖香は興奮して笑い声を上げ、甘美で幸せな笑顔が清純な顔に浮かび、頬には赤みが広がった。花びらが一枚一枚舞い落ち、白いワンピースを着た彼女は、まるで花の妖精のようだった。
南条陽凌は彼女のためにブランコを押していたが、彼女の顔が目の前を通り過ぎる瞬間、彼は呆然となった。
全身が電気に打たれたかのようだった。彼はこんな夏野暖香を見たことがなかった。子供のように興奮し、小さな天使のようだった。彼は以前気づかなかったが、彼女が笑うとこんなにも美しいのだと。