第70章 よくもこんな風に彼に命令できるな1

しかし南条陽凌は、普段は自分の食事や身の回りのことさえ人に世話されているのに、まして自らスーパーに買い物に行くなんて。それに南条帝国財閥の皇太子に生理用ナプキンを買いに行かせるなんて、あまりにも無茶すぎるでしょう!

以前の夏野暖香ならこんな風に彼に命令したりしなかったはず!

でもどうしよう?

彼、南条陽凌が男らしくないと言われてしまったのだ?

士は殺されても辱められてはならない!

生理用ナプキンを買うだけじゃないか、大したことないだろう?

南条陽凌は怒りながら階下へ駆け下りた。

スーパーの入り口で。

男の長身の影がちょっと躊躇したが、それでも中に入った。

入るなり、スーパーの若い店員たちの目が一斉に輝いた。

女性店員たちの目に驚きの色が走り、お互いに視線を交わすと、目の中はハートマークでいっぱいだった。

なんてイケメンなの?

オーラがすごい!

入ってきただけで、威厳が漂っているわ!

心臓もドキドキしちゃう。

この男は、全身から生まれながらの貴族の気品を放っていて、思わず憧れてしまう。

驚きの後、女性店員たちは一斉に彼の方へ駆け寄った。

「お客様、何をお求めですか?!」数人の店員が揃って、口を揃えて尋ねた。

深夜の24時間営業のスーパーはもともと客が少ない。

わずかな客も、この声に反応して、一斉に南条陽凌に視線を向けた。

ほぼ一瞬のうちに、スーパー中の人々が、驚きと好奇心の目で彼を見つめていた。

南条陽凌は普段から注目されることには慣れていて、どこへ行っても常に焦点となる存在だったが、こういう視線に対しては見て見ぬふりをし、まったく気にしないのが常だった。

生まれながらにして神様の寵児である彼が、そんなことに気を留めるはずがない。世界中が彼のために道を譲ったとしても、当然のことと思うだろう。

しかし、この瞬間……

彼は突然、少し居心地の悪さと憂鬱を感じた。

まるでこの人たちがゴリラでも見るような目で自分を見ているような気がした。

彼が現れるや否や、サーカスのピエロのように、みんなが押し寄せてきた。

これはすべて夏野暖香のせいだ。

南条陽凌は誓った、絶対にあの女を許さないと。