第141章 【141】彼女の髪の毛一本たりとも触れさせない3

目の前の男性の後ろ姿は、彼女にとって、非常に堂々としていた。

ふふ……彼女の南條漠真は、ついに……大人になったのね。

「おい、分かってるなら今すぐ消えろ!今日は、夏野暖香の命をいただくつもりだ!」リーダー格の男が、ナイフを振り回しながら、橋本健太に向かって凶悪な表情で言った。

夏野暖香は信じられないという顔で目を見開いた。

誰が彼女を害そうとしているのか?しかも、彼女の命を奪うことにそんなに執着して?

夏野暖香は恐怖で顔が青ざめていた。

橋本健太は目の前に現れた男たちを見て、唇の端に冷笑を浮かべた。

「俺がいる限り、彼女の髪の毛一本たりとも触れさせない!」

「ハハハ、お前にその力があるかどうか見ものだな!おい嬢ちゃん、こっちに来て兄さんたちと遊ぼうぜ。今日はこのイケメンの前で、お前をたっぷり気持ちよくしてやるよ!」

夏野暖香は全身を震わせ、恐怖に駆られて橋本健太を見た。橋本健太は素早く彼女に一瞥をくれ、小声で言った。「端に隠れろ!」そう言いながら、地面に転がっていたビール瓶を蹴り飛ばした。男たちは驚いて避けようとし、その瞬間、彼は素早く飛びかかった。

「くそっ、ヒーローごっこか。兄弟たち、一緒に片付けろ!」

数人の男たちが一斉にナイフを振りかざして橋本健太に向かってきた。

場面は一瞬にして混乱した。

橋本健太は格闘技の腕前が高く、普段なら、こういった連中を相手にするのは朝飯前だった。

しかし今日は、彼はお酒を飲んでいた。歩くときでさえふらついていた。

腕も思うように動かない。

さらに相手の数が多く、彼は前後から攻撃を受ける状況だった。

一気に何人かを蹴り飛ばしたが、別の男たちがまた襲いかかってきた。

夏野暖香は恐怖で全身が震え、頭の中が真っ白になった。手にビール瓶を取り、一人の男の後頭部めがけて振り下ろした。

瞬時に血が噴き出し、地面に飛び散った。その男は彼女の目の前で倒れた。夏野暖香はビール瓶を落とし、恐怖で悲鳴を上げた。

橋本健太は振り返って彼女を見た。「逃げろ!」彼は目の前の敵と戦いながら、彼女に向かって叫んだ。

一蹴りでナイフを飛ばし、ちょうど夏野暖香に向かって走ってきた男の背中に命中させた。

その男は夏野暖香の目の前で目を見開いたまま倒れた。