第204章 【204】クルーズ船でのサプライズ4

「暖香ちゃん、早く願い事をして!」関口月子が声をかけた。

夏野暖香は我に返り、両手を胸の前で合わせた。

目を閉じる。

心の中で念じた。「南條漠真が幸せでありますように。そして…私の願いが叶いますように…」

夏野暖香が願い事を終えると、ゆっくりと目を開けた。

その視線は、向かい側にいる南条陽凌と偶然にも交わった。

南条陽凌は熱い眼差しで彼女を見つめていた。

彼女は突然、胸がときめくのを感じた。

「ろうそくを吹き消して!」南条陽凌が言った。

続いて、夏野暖香と南条陽凌、そして全員でろうそくを吹き消した。

照明が明るくなる。

デッキ全体に、巨大なケーキが置かれていた。

全員が夏野暖香の誕生日ケーキを分けてもらえるようになっていた。

隅では、フランス人のベーシストとピアニストが誕生日の歌を演奏していた。

空には花火が打ち上げられ、様々な模様を描いていた。

夏野暖香の名前も空に輝いていた。

夏野暖香は南条陽凌に抱かれながら、ダンスフロアへと滑り出した。

二人で今日最初のダンスを踊った。

「今夜のすべては、あなたのために輝いている」南条陽凌は夏野暖香の腰を抱き、熱い眼差しで彼女を見つめた。

夏野暖香はようやく理解した。なぜ南条陽凌が彼女にネックレスをプレゼントしたのかを!

それは誕生日プレゼントだったのだ。

そして彼女に必ず身につけてほしかったのだ。

今夜、彼女はここで最も輝く姫だった。

そして隅には、たくさんのギフトボックスが置かれていた。

それらのプレゼントは、今日来た人たちが夏野暖香に贈ったものだった。

南条陽凌はすべてを準備し、全員に夏野暖香を驚かせるよう伝えていたのだ。

彼は確かに、彼女に大きな驚きを与えることに成功した。

しかし夏野暖香の心の中では、何かが足りないような気がしていた。

視線は遠くにいる橋本健太と南条慶悟に向けられた。二人は一緒に立っており、まるで絵に描いたような美しいカップルのようだった。

彼女は…もう望みすぎるべきではないのだろうか?

夏野暖香は少し心ここにあらずといった様子でダンスを踊り、頭もぼんやりとして、つまずきそうになった。

「何を考えているの?ぼんやりして」南条陽凌は我慢強く尋ねた。

「ありがとう」夏野暖香は言った。