「暖香ちゃん、早く願い事をして!」関口月子が声をかけた。
夏野暖香は我に返り、両手を胸の前で合わせた。
目を閉じる。
心の中で念じた。「南條漠真が幸せでありますように。そして…私の願いが叶いますように…」
夏野暖香が願い事を終えると、ゆっくりと目を開けた。
その視線は、向かい側にいる南条陽凌と偶然にも交わった。
南条陽凌は熱い眼差しで彼女を見つめていた。
彼女は突然、胸がときめくのを感じた。
「ろうそくを吹き消して!」南条陽凌が言った。
続いて、夏野暖香と南条陽凌、そして全員でろうそくを吹き消した。
照明が明るくなる。
デッキ全体に、巨大なケーキが置かれていた。
全員が夏野暖香の誕生日ケーキを分けてもらえるようになっていた。
隅では、フランス人のベーシストとピアニストが誕生日の歌を演奏していた。
空には花火が打ち上げられ、様々な模様を描いていた。
夏野暖香の名前も空に輝いていた。
夏野暖香は南条陽凌に抱かれながら、ダンスフロアへと滑り出した。
二人で今日最初のダンスを踊った。
「今夜のすべては、あなたのために輝いている」南条陽凌は夏野暖香の腰を抱き、熱い眼差しで彼女を見つめた。
夏野暖香はようやく理解した。なぜ南条陽凌が彼女にネックレスをプレゼントしたのかを!
それは誕生日プレゼントだったのだ。
そして彼女に必ず身につけてほしかったのだ。
今夜、彼女はここで最も輝く姫だった。
そして隅には、たくさんのギフトボックスが置かれていた。
それらのプレゼントは、今日来た人たちが夏野暖香に贈ったものだった。
南条陽凌はすべてを準備し、全員に夏野暖香を驚かせるよう伝えていたのだ。
彼は確かに、彼女に大きな驚きを与えることに成功した。
しかし夏野暖香の心の中では、何かが足りないような気がしていた。
視線は遠くにいる橋本健太と南条慶悟に向けられた。二人は一緒に立っており、まるで絵に描いたような美しいカップルのようだった。
彼女は…もう望みすぎるべきではないのだろうか?
夏野暖香は少し心ここにあらずといった様子でダンスを踊り、頭もぼんやりとして、つまずきそうになった。
「何を考えているの?ぼんやりして」南条陽凌は我慢強く尋ねた。
「ありがとう」夏野暖香は言った。