南条陽凌は関口月子もそう言うのを聞いた。
なんと、この件については、みんなが知っていた。
彼一人だけが、蚊帳の外だったのだ!
そして夏野暖香が、こっそり橋本健太に会いに行ったのは、彼のために薬を手に入れるためだったのか?
一瞬のうちに、南条陽凌の心は、かつてないほどの興奮と衝撃に包まれた!
彼は手を伸ばし、ゆっくりと南条慶悟が差し出した薬の瓶を受け取った。
精巧な瓶で、とても可愛らしい。
冷たく感じる。
しかし彼はその小さな瓶を握りながらも、自分の耳や目が信じられないでいた。
もし南条慶悟一人だけがそう言うのなら、彼は信じなかったかもしれない。
なぜなら、橋本健太が南条慶悟に彼を騙すよう教えた可能性が高いからだ!
しかし、みんながそう言っている!
南条飛鴻も、そして常に夏野暖香の地位を狙っていた橋本真珠もその場にいた。
そして誰も反論しなかった!
ならば、この件については、疑う余地はない!
なんと、あの女は、彼のことをこんなにも気にかけていたのだ!
しかし彼は、彼女を誤解し、傷つけていた!
そう思うと、南条陽凌の心には、かつてないほどの後悔と苦しみが湧き上がってきた。
そしてこの時、橋本健太も入ってきた。
それまでは、南条陽凌はまだ、どうやって橋本健太のやつを懲らしめようかと考えていた!
しかし今、彼を見ても、怒りは湧かなかった。
むしろある種の達成感があった。
橋本健太は前に進み、南条陽凌を見た。
目には心配の色が浮かんでいた。
「陽凌、大丈夫か」
「大丈夫だ!」南条陽凌はまだ少し冷たく言った。一瞬、反応が追いつかなかった。
結局のところ、地獄から天国へという味わい。
彼はまだ人生で初めての経験だった。
夏野暖香がどれほど優れていようとも、みんなを動かして彼を騙すことはできないだろう!
「慶悟、薬は皇太子に渡したか?」
「うん...もう兄に渡したよ...」
「この薬は一回に一粒、一日三回だ。民間療法ではあるが、中の薬材は厳選されたもので、病気を治さなくても害はないから、安心して服用してくれ。今日、暖香ちゃんが急いで私に薬を求めてきたとき、彼女があなたを気にかけているんだと言ったよ、あなたの足はそれほど深刻ではないと。今となっては、皇太子、やはり暖香ちゃんがあなたをよく理解しているようだね!」