しかし急いで歩きすぎて足元がおぼつかず、彼は地面に倒れてしまった。
藤田抑子は驚いて、すぐに助け起こそうとしたが、南条陽凌に怒鳴られて退いた。
「出ていけ!」
南条陽凌は杖で体を支え、地面に落ちた白く純粋なチューリップを拾い上げ、激しく窓の外へ投げ捨てた。
大量の白いチューリップが国際病院の10階から投げ捨てられた。
花びらが空中に舞い散った。
通りかかった各国の観光客たちが足を止めて見入った。
無数のチューリップの花びらが空から降り注ぎ、まるで壮大な花びらの雨のようだった。
驚嘆の声、悲鳴が一斉に響き渡った。
写真を撮る人もいれば、若いカップルがその背景で記念撮影をしようと争う姿もあった。
南条陽凌は血走った目で、9999本のチューリップを全て屋上から投げ捨てた。
病室内には、白く純粋な花びらが一面に散らばり、まるで花の海のようだった。
彼はついに、その白い花の海の中に倒れ込み、体力を使い果たして完全に気を失ってしまった。
「皇太子様—若帝様!」ドアの方から驚きの叫び声が聞こえた。
慌ただしい騒ぎの中、南条陽凌はようやく運び出され、チューリップの香りで満ちたこの病室から連れ出された。
×××××分割線××××
一方、何も知らない夏野暖香は、この時関口月子と一緒に川辺で象に乗っていた。
象が小川の中を歩き、二人は高い象の背中に座り、ロープをつかんでいた。
二人は興奮して絶え間なく悲鳴を上げていた。
そして傍らには、南条飛鴻と橋本健太がいた。
象が川の中を進むとき、長い鼻を振り回し、大量の水しぶきを上げた。
冷たい水しぶきが夏野暖香と関口月子の体や顔にかかり、二人は悲鳴を上げ、その狼狽える姿に見物人から笑い声が起こった。
夏野暖香も思わず笑い、その花のような笑顔で顔を向けると、視線の中で、ちょうど橋本健太も笑いながら彼女たちの方を見ていた。
二人の視線がぴったり合った。
男の端正な顔は遠くからでも、心を揺さぶるものがあった。
夏野暖香の表情が一瞬こわばったが、橋本健太は微笑みながら手を口元に当て、突然彼女に向かって叫んだ。「気をつけて!」
遠くで、いたずら好きな小さな象が長い鼻を振り上げ、大量の水しぶきを上げ、夏野暖香と関口月子はまともに水を浴びせられた。
傍らの南条飛鴻は二人を指さして大笑いした。