第234章 【234】帝様に何かあった1

しかし急いで歩きすぎて足元がおぼつかず、彼は地面に倒れてしまった。

藤田抑子は驚いて、すぐに助け起こそうとしたが、南条陽凌に怒鳴られて退いた。

「出ていけ!」

南条陽凌は杖で体を支え、地面に落ちた白く純粋なチューリップを拾い上げ、激しく窓の外へ投げ捨てた。

大量の白いチューリップが国際病院の10階から投げ捨てられた。

花びらが空中に舞い散った。

通りかかった各国の観光客たちが足を止めて見入った。

無数のチューリップの花びらが空から降り注ぎ、まるで壮大な花びらの雨のようだった。

驚嘆の声、悲鳴が一斉に響き渡った。

写真を撮る人もいれば、若いカップルがその背景で記念撮影をしようと争う姿もあった。

南条陽凌は血走った目で、9999本のチューリップを全て屋上から投げ捨てた。

病室内には、白く純粋な花びらが一面に散らばり、まるで花の海のようだった。

彼はついに、その白い花の海の中に倒れ込み、体力を使い果たして完全に気を失ってしまった。

「皇太子様—若帝様!」ドアの方から驚きの叫び声が聞こえた。

慌ただしい騒ぎの中、南条陽凌はようやく運び出され、チューリップの香りで満ちたこの病室から連れ出された。

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一方、何も知らない夏野暖香は、この時関口月子と一緒に川辺で象に乗っていた。

象が小川の中を歩き、二人は高い象の背中に座り、ロープをつかんでいた。

二人は興奮して絶え間なく悲鳴を上げていた。

そして傍らには、南条飛鴻と橋本健太がいた。

象が川の中を進むとき、長い鼻を振り回し、大量の水しぶきを上げた。

冷たい水しぶきが夏野暖香と関口月子の体や顔にかかり、二人は悲鳴を上げ、その狼狽える姿に見物人から笑い声が起こった。

夏野暖香も思わず笑い、その花のような笑顔で顔を向けると、視線の中で、ちょうど橋本健太も笑いながら彼女たちの方を見ていた。

二人の視線がぴったり合った。

男の端正な顔は遠くからでも、心を揺さぶるものがあった。

夏野暖香の表情が一瞬こわばったが、橋本健太は微笑みながら手を口元に当て、突然彼女に向かって叫んだ。「気をつけて!」

遠くで、いたずら好きな小さな象が長い鼻を振り上げ、大量の水しぶきを上げ、夏野暖香と関口月子はまともに水を浴びせられた。

傍らの南条飛鴻は二人を指さして大笑いした。