第270章 【270】あなたが欲しいものは何でも与える1

夏野暖香は南条陽凌の決然とした顔を見て、一瞬にして心が死んだように感じた!

彼女はできることをすべてやった。

おそらく、これはすべて運命なのだろう!

夏野暖香は南条陽凌を見つめ、唇の端にゆっくりと嘲笑的な冷笑を浮かべた。

「南条陽凌、あなたは私が想像していたよりも人間性がないわ!以前は、私が間違っていた。私の間違いは、もっと早くあなたから離れるべきだったということ!」

南条陽凌はそこに座ったまま動かず、夏野暖香を見ることさえしなかった。ただ膝の上に置いた手が、少しずつ強く握りしめられていった。手の甲には、青筋が浮き出ていた。

「どうしても、あなたが私を追い詰めて、無実の命を自分の手で終わらせるよう強いるなら、いいわ、あなたの望み通りにしてあげる!南条陽凌、後悔しないでね!」

夏野暖香はそう言うと立ち上がり、橋本健太に向き直った。そして拳銃を持ち上げ、橋本健太の体に向けた。

橋本健太はそこに立ち、ハンサムな顔は相変わらず落ち着き払っていた。

「暖香ちゃん、撃ちなさい」橋本健太はゆっくりと目を閉じた。

七々、おそらく、もうすぐ君に会いに行くよ。

君が生きている希望がとても薄いとわかっていても、それでも私は頑固に自分を欺き続けてきた。

孤児院から連れ出された瞬間から、私は誓った。お金ができたら、力を持ったら、必ず君を側に迎え入れると。幸せを、一生の幸せを君に与えると。

これほど長い年月、私の持つものは増えていったのに、君は私からどんどん遠ざかっていった。

何度も何度も希望と失望を繰り返し、毎回、それは生死をかけた苦しみだった。これほど長い間、私も本当に疲れた、とても疲れた。

すべてを手に入れても、君と分かち合えないなら、そんな人生に、生きる意味があるだろうか。

七々、もし今回本当に君だとしたら、ごめん、また一度君を裏切ることになるかもしれない!

もし来世があるなら、絶対にこんな生き方は選ばない。

ずっと君のそばにいて、たとえ一緒に苦労して、互いに助け合うとしても、それは天涯孤独で二度と会えないよりもずっといい。

この瞬間、橋本健太の身には、むしろある種の諦めがあった。

熱い涙が夏野暖香の目から溢れ出た。南條漠真、まさか、いつか私があなたに銃を向けることになるなんて。

たぶん、これが私たちの結末なのね。