小道具を整理していると、突然目の前が暗くなった気がした。
顔を上げると、目の前に立つ男性を見て、少し驚いた。
「飛鴻?どうしてここに?」夏野暖香は目の前に立つ南条飛鴻を驚いて見つめ、笑いかけた。
南条飛鴻はバイクの革ジャンを着こなし、高身長で、全体的にかっこよく見えた。
南条飛鴻は少し困ったように言った。「外で半日も待っていたのに、出てこないから。仕方なく中に入ってきたんだ!見たところ、状態は悪くないみたいだね、想像していたほど悲惨じゃないな!」
夏野暖香は言葉を失った。
南条飛鴻は彼女の状況を知ったのだ。でも、どうすれば悲惨に見えるというのだろう?泣き叫んで、生きる気力を失っているべきだとでも?
「行こう、美味しいものを食べに連れて行くよ!」
夏野暖香は眉をひそめた。「今から?遅すぎるでしょ……」彼女は南条飛鴻が彼女のせいで巻き込まれることを望んでいなかった。
「どうした?南条陽凌と一緒にいたいのか?」南条飛鴻は眉を上げた。
「違うわ!」
「じゃあ、行こう!」南条飛鴻はそう言いながら、彼女の腕を引いて外へ向かった。
「ちょっと待って、バッグを取るわ……」
……
外には白いハマーが停まっていた。南条飛鴻は前に出て、彼女のためにドアを開け、車体を叩きながら得意げに言った。「この車どう?今日の午後に海外から取り寄せたばかりなんだ!」
「いいわね」夏野暖香はこういうものには詳しくなかったが、一目見ただけでも迫力があることはわかった。通りを歩く人々は、この真新しいハマーを見て、みな驚きの表情を浮かべていた。
夏野暖香は車に乗り込んだ。
「暖香ちゃん、何が食べたい?」
「わからない……」夏野暖香は実は何も食べたくなかった。とても疲れていて、家に帰って寝たいだけだった。
しかし、南条飛鴻が来てくれたのだし、南条陽凌と向き合いたくもなかった。
「屋台に行かない?」
夏野暖香の目が輝いた。
「どう?久しぶりだろ!行こう、大学の近くで食べよう!」
以前、大学時代には、南条飛鴻はよく暖香を連れて屋台に行っていた。多くの若い男女と同じように、ただ皆は彼らが親友同士だと知っていた。
その後、暖香が南条陽凌と結婚してからは、もう行くことはなかった。